第3回:「わかっている」の先へ
― 「気をつけて」を卒業し、プロの「根拠」を共有する
いつも注意しているのに・・・
「いつも注意しているのに、なぜ……」 重大事故が起きた際、管理者が抱く最も切実な疑問かもしれません。しかし、ここには大きな落とし穴があります。管理者が「注意しろと言ったから大丈夫だ」と考えてしまうこと自体が、実はリスクを放置する原因になっている場合があるのです 。
今回は、ガイドラインの文言を繰り返すだけでは届かない、保育者の「納得感」と「行動」を変えるアプローチについて考えます。
管理者が陥る「伝えたつもり」の罠
多くの園長や主任は、会議や朝礼で「事故に気をつけてください」と呼びかけます。しかし、現場の保育者からすれば、それは「言われなくてもわかっていること」です 。
「注意してください」という言葉は、受け手にとっては抽象的すぎて、具体的な行動の修正に繋がりません 。管理者が「伝えた」ことで満足し、現場の「個人の注意」に丸投げしてしまう状態は、リスクマネジメントが機能していない証拠でもあります。事故は、決して不注意だけで起きるのではなく、「注意していたのに、防げない構造」の中に潜んでいるからです 。
「わかっている」という心理的ブレーキを外す
ベテランほど、リスクの存在は知識として知っています 。しかし、「自分たちの園ではいつも通りだから大丈夫だろう」という心理(正常性バイアス)が働き、無意識にリスクを過小評価してしまいます 。
ここで大切なのは、ガイドラインを復唱させることではありません。保育者の胸にそっと落ちるような、「リスクを自分事として捉え直す言葉」です。
●「なぜ防げなかったのか」ではなく「なぜ事故が起きなかったのか」を語る: 事故が起きていないのは、誰かの「小さな工夫」があるからです 。その具体的なファインプレーを言語化して共有しましょう 。
●「最悪を想定する力」を育てる: 「もし今、ここで子どもが倒れたら?」という問いかけを日常の会話に混ぜ、反射的に動けるイメージを共有します 。
「気をつける」を「仕組み(仕掛け)」に変換する
「気をつけて見る」「注意する」という精神論を、具体的な「とるべき具体的な行動」⇒「保育の仕掛け」に置き換えてみてください 。
●「見守りを強化」ではなく「立ち位置を1メートル下げる」
: 視界を広げるための物理的な指示 。
●「食事に注意」ではなく「飲み込むまで次のスプーンを運ばない」
: 動作としてのルーティン化 。
●「環境に配慮」ではなく「この遊具の下には必ずマットを敷く」
: 誰がやっても同じ結果になるルール 。
こうしたOJTなどをつうじた、具体的な「仕掛け」こそが、職員のキャリアと人生を守る「盾」となります 。ベテランの保育士には、OJTトレーナーとして、若い保育士の育成に当たらせる上で、こうした行動の模範を示し、なぜこの行動が必要なのかを説明することで、正常性バイアスの罠から逃れることができます。
プロとして自信を持って「安全」と言い切るために
「危ないからさせない」という消極的な判断は、子どもの成長の機会を奪ってしまいます 。一方で、「いつも通りでなんとかなるだろう」という過信や、「注意したから大丈夫」という管理者の思い込みは、事故の再発を招き、保護者からの不信感に繋がりかねません 。
この狭間で、プロとして自信を持って「この遊びは、こう工夫しているから安全だ」と言い切るために、共通のチェックリストを活用しましょう 。根拠に基づいた対策を講じることこそが、令和の時代に求められるリーダーシップです 。
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